- 宅建業免許を取るためには、どんな広さや間取りの事務所が必要?
- 事務所の中に、何の備品を配置しておけばいい?
- 自宅事務所やレンタルオフィスを事務所にする条件は?
不動産業を始めるための宅建業免許の申請では、不動産業に従事する事務所の要件が重要となります。
そのため、宅建業免許取得や不動産会社設立のタイミングで、上のようなお悩みを抱かれる起業家様も多くいらっしゃいます。
当事務所でも、非常に多くご質問をいただくのが「事務所の要件」になります。
不動産業の事務所の形態
まず基本的に、宅建業免許を取得するための事務所の要件としては、不動産業の業務を継続的に行える機能を持つ部屋(フロアー)で、かつ、独立した形態を備えていることが求められます。つまり、大事なポイントは継続性と独立性です。
このうち継続性については、あまり問題が生じることはありません。例外的に、たとえば時間貸しのレンタルオフィスなどでは、その事務所で継続的に(常時)不動産業を営めるとはいえませんので、宅建業上の事務所としては認められないという問題があります。
一方、宅建業免許の審査においては、事務所の形態のうち後者の「独立性」はかなり厳格に確認されることになります。
事務所の要件として独立性が必要であることから、原則、戸建て住宅の一部(一室)や集合住宅の一室(一部)を事務所とすることは認められませんし、他の法人と同じフロアを共有して使う場合にも、原則、事務所とすることは認められないことになります。
戸建て住宅や集合住宅の一室を事務所とする場合
ただし、戸建て住宅や集合住宅の一室であっても、以下のような要件を満たす場合には、例外として宅建業免許が取得できることもあります。
- その部屋独自の入口が設置されている
- 独自の入口はないものの、玄関からその部屋まで他の部屋を一切通らず廊下だけで入ることができる
いずれの場合でも、事務所として使う部屋の独立性が高いことが前提です。
たとえば自宅で宅建業を始めようとするとき、事務所として使う部屋の構造が、隣の部屋とふすまなどで仕切られているだけで、開け広げて使うことが前提の間取りになっていると、独立性が低く認められない可能性が非常に高くなります。
また、たとえ上記いずれかの構造になっていても、事務所として使用する部屋の奥に、事務所利用予定の部屋を通らなければ入れない部屋があると、独立性を満たさないことになります。
これは、奥の部屋を使うときに事務所を通らなければならなくなるためです。もっともこの場合、奥の部屋も合わせて事務所とするなら、免許の可能性は出てきます。
他の会社と同じフロアーを共用する場合
商業ビルなどのフロアーを別会社と共用するケースでも、戸建て住宅の一室を利用する場合と同じように、不動産業を営む事務所には高い独立性を持つことが求められます。
- それぞれの会社に別の入口があり、他社を通ることなく各会社に入れる
- 内部も固定式の背の高いパーティション等で、少なくとも他社としっかり間仕切りされている
基本的には、上記のように別の入口と壁での区分けが必要です。
もっとも、実際上よく問題になるのは、既に別の会社さんがフロアー全体を使っており、その一部を間借りするかたちで宅建業免許の申請(不動産業の開業)を行う場合です。
このようなときは、そのフロアーの入口から入ったところを固定式の背の高いパーティションで共用の待合スペースのような形で間仕切りし、そのスペースからさらに各会社へ入るドアを設置して区分することで、宅建業免許の申請が受理されるよう持って行くケースも多いです。
この際、仕切りの方法やパーティションの種類、高さなどによっては、行政庁からOKが出ないことがあります。そのため、これからコストをかけてパーティション等を導入する(独立性を高める工事などを行う)というときは、事前に行政庁へ確認を取っておくほうが無難です。
というよりも、フロアを共有するかたちでの宅建業免許は、先に契約をしてしまったりパーティションを導入してしまう前に、しっかりと行政に確認を入れながら進めるほうがよいでしょう。
独立性の要件は年々厳しくなっている
宅建業免許における事務所の要件は、「こんな感じで行けるだろう」という思い込みで進めてしまうと、行政窓口で申請する際や、申請後の審査において、「これでは免許を下ろすのは難しいです」と拒否されてしまうことが多々起こります。
特にここ数年、不動産業に従事するための事務所の「独立性の要件」は年々厳しくなっていますから、「前に免許を取った会社と同じような間取りだから、なんとかなるだろう」「あの会社でも免許が下りているんだから、ウチも問題ないだろう」と高をくくらず、事前確認を行いながら確実に進めるほうがよいです。
自宅事務所やレンタルオフィスでの開業を検討される場合、もし免許が下りる場合でもそれは例外的な扱いであることを意識しておかないと、行政窓口で「問題ないだろ!」「他社でも同じような構造で免許取ってるだろ!」と強気に意志を伝えることが、手続きを難航させる原因にもなりかねません。
なお、事務所の要件でお困りの場合は、宅建業免許に詳しい行政書士にご相談いただくのも一つの手です。