いまお勤め中の不動産会社を退社して、ご自身で不動産会社を設立して独立されるご予定の方も多いと思います。
実はこの流れにおいては、よく引っかかって手続きが止まってしまうポイントがあります。
ここでは不動産会社を退社して独立開業する場合の、宅建業免許上の手続きに関する注意点に説明していきたいと思います。
1.現在の会社に勤務しているということ
現在まだ不動産会社にお勤め中の状態で、「先に会社を作って、独立開業後のために前倒しで宅建業免許を取得しておこう」とお考えになる方も多いです。ここで第一に問題となるのは、現在の会社における副業禁止等の社内規則です。
実際問題としては、もう会社を退社する状態に至っていれば別の会社を立ち上げたとしても、実質的に副業禁止の規定に抵触するとまでは言えないかもしれません。
しかし、円満退社ではなく何かしらのもめ事があって退社するケースなどでは、副業禁止の規定等を持ち出されて問題化することも考えられます。
この点は、念のためですが、まず注意しておいていただくほうがよいポイントです。
2.専任の宅地建物取引士として常勤性が求められていること
次に、現在お勤めの会社で専任の宅地建物取引士として勤務されている方が起業されるケースです。このような状況では、専任の宅地建物取引士としての「専任性」(その会社の宅建業のみに従事していること)が求められますから、他に会社を設立して代表取締役に就任することは、この専任性を満たさないことになってしまいます。
退社前に、専任の宅地建物取引士から外してもらえればこの問題は解決しますが、辞める前に「専任だけ外してくれ」というのも言いづらい状況はあるかと思います。案外、引っかかってしまいやすいポイントになります。
3.退社証明書が必要になること
また、これも専任の宅地建物取引士として勤務していた場合ですが、ご自身で設立される新しい会社でも専任の宅地建物取引士に就任する場合、今の会社を退社するだけでなく、次で説明する「取引士個人として、取引士証の勤務先変更」が必要になってきます。
この際、いま勤務している会社から、退社証明書を発行してもらう必要が出てきますが、この発行まで時間がかかるケースも多く見受けられます。
たとえば大手不動産会社さんなどでは、実際に退社してから1ヶ月程度経過して、ようやく発行されるということもあるようです。
手続きに必要な書類が発行されるまでの期間については、予め念頭においてスケジューリングすることがポイントになります。
4.取引士証の変更届が必要になること
上記3と一続きですが、新たに設立する会社で専任の宅地建物取引士として勤務する場合、その前提として、取引士証の勤務先が空の状態になっていなければなりません。
退社証明書があまりに長期間発行されないようであれば、一度行政窓口で相談してみるのも手ですが、そうでない場合は、退社証明書が発行されるまでの間、新会社の宅建業免許申請は提出できないことになります(専任の宅地建物取引士が居て、初めて申請が可能になるため)。
そのほかに、取引士証の住所が現住所と異なっている、本籍地が変わった、などの変更点があれば、それを証明する書類(たとえば住民票の写し)などを用意して、変更届を先に提出し、情報を最新のものにしておかなければなりません。
このあたりの細かな手続きについても、いくつか重なると不動産業開業までの日数が延びる原因になりますので、前もって確認しておきたいポイントです。
5.手続きに思った以上の時間がかかる可能性があること
以上の注意点を含めて、現在お勤めの会社を退社され、新しい会社を作って宅建業免許を申請し、保証協会に入会し、宅建業免許を受けて不動産業の営業を開始するまでには、予想されている以上の日数がかかることが多いです。
宅建業免許を取得するまでには結構な日数がかかることをご存じの方でも、退社される直前に有給を消化し、その間に会社設立や宅建業免許を受けようとの計画を前提としたご相談も多く承ります。
しかし、このような状態では現在お勤めの会社に専任の宅地建物取引士として勤務したままの状態になっていることが多く、何の手続きさえ進められないことも少なくありません。
これから今の不動産会社を退社されて独立をご予定の方は、必要日数の目安、独立開業までのスケジュール感を確認するために、手続きに詳しい行政書士に早めにご相談いただくのもオススメです。
当事務所は、これから不動産業を開業される方の初回相談は無料で承っておりますので、この時点で何か請求させていただくことはございません。